いらないCD、CD-R/RWをお持ちの方、記録面を見ながら反対側のレーベル面に爪をちょんと立てて見てください。特に何も変化が見えない場合はほんの少し強くしてみてください。それでも何を言いたいのか分からない場合は、爪を立てたまますいーっと移動させてみてください。これでおそらく意図していることがお分かりいただけたと思いますが、立てている爪の形が記録面側から視認できてしまうんです。これはつまり、CDはレーベル面に尖ったものを当てられるといとも簡単にダメージを受けてしまうということ。記録面側に傷が付かないように気を遣う人は多いと思いますが、実はCDはレーベル面こそ傷を付けないように気を遣わなければならない面だったのです。
これは1.2mmのポリカーボネート基盤に記録・反射層が重ねられ、その上に0.01mmの保護層・レーベルが重ねられているというCDの構造をふまえると実に当然のことです(参考 : CDの構造図があります)。記録面側から実際にデータが書き込まれている層までは1.2mmあるのに対して、レーベル面からは0.01mmしかありません。メーカーによっては強化を図っているものもありますが、基盤のポリカーボネートの中に埋まっているわけではないので非常にやわく、ものによってはレーベル面にガムテを貼ってベリっと剥がしてやるだけで記録層もろとも剥がれてきたりします(いらないCD-Rをお持ちの方はぜひお試しください)。
実際はCD-ROMにはエラー訂正の仕組みが備えられているので、軽く傷ついて少々の記録ピットが読めなくなったぐらいではデータが読み出せなくなるほどのダメージには直結しません。ですが万が一、家族で撮った思い出の写真など、記録していた大事なデータがちょっとしたレーベル面への傷で吹っ飛んでしまうかもしれないということを考えると、僕はCD-Rにそういったデータを保存する気にははなれません。
一方DVDはというと、構造は0.6mmのポリカーボネート基盤に記録層が重ねられ、その上に0.01mmの保護層、そして0.6mmの基盤が重なるという構造。つまり記録層を0.6mmの基盤でサンドしている形になっています(先ほどのページにDVDの図もあります)。CDの記録面側は1.2mmあったのがDVDでは0.6mmと半分になっていますが、その分レーベル面側も0.6mmの基盤がガードしてくれています。これなら少々爪や尖ったものが当たっても大丈夫。CDに比べれば断然安心できる構造です。試しに冒頭CDでやったのと同じことをDVDにしてみると、かなり強く力をかけても爪の形は見えません。
いよいよ岩手でも地上デジタル放送の本放送がこの10月1日に開始され、ハイビジョン対応のテレビの普及と合わせて、今後はハイビジョンのまま録画することが出来る媒体としていわゆる次世代DVDの需要が高まって来ることと思います。今現在、ソニー・松下陣営が推進するBlu-ray Discと東芝・NECが推進するHD DVDの2つの規格が市場の主導権争いに突入し始めていますが、果たしてこれらのディスクの構造はどうなっているのかというと…
まずはHD DVD。これはDVDとほぼ同じ構造になっていて、記録面を0.6mmの基盤2枚で挟むような形。次にBlu-ray。これはレーベル面側から1.1mmの基盤、それに記録面、そして0.1mmのカバー層が重なるという構造。CDとは逆で、記録層は記録面側の近く、0.1mmのところにあることになります。
この0.1mmという数字はCDのレーベル面から記録層までの0.01mmに対して10倍あるわけですが、「0.1mm」とういう厚さを改めて単独で考えてみると…やはり薄い、弱そう、こう感じるのは僕だけじゃないと思います。Blu-ray陣営もこれはひとつの問題であると認識し、対策として記録面側にハードコートをして強度を高い水準に保つ基準を設けました。ハードコートにより傷にも強く汚れもつきにくくなることになり、問題は一応解決されたということなのですが、果たして実際のところの強度はどんなもんなんでしょう。
ならばHD DVDがいいじゃないかという話になるわけですが、こちらにも実はマイナス面があります。それは容量の問題です。Blu-rayが2層で50Gに対してHD DVDは30GBと、差は20GB。単純に、容量がでかい方がいいということも理由のひとつですが、一番問題になるのがハイビジョンでの録画可能時間。テレビを録画したい、HDDに溜めて見たら消すというのではなく、外部ディスクに記録して保存版にしたいものとなると、映画など尺が長いものである割合が多くなると思います。地上デジタル放送、BSデジタル放送のHD画質放送のビットレートはそれぞれ17Mbpsと24Mbps。30GBのHD DVDの場合、地上デジタル放送ならば220分ほど、BSデジタルならば150分ほどの録画ができるものと思われますが、問題は後者の150分という時間です。2時間30分ですから、ほとんどの番組はおさまってくれるかもしれませんが、映画となると足が出てしまうものも少なくありません。2枚に分けて記録する場合、鑑賞中にディスクを取り替えなければならないという手間に加え、現在のディスク価格1枚3千円というのも痛いポイントになります。レコーダーにHD画質でエンコードし直す機能があれば、ビットレートを少し下げて1枚におさまるサイズにシュリンクさせるということも可能ですが、再エンコードで画質を低下させてしまいます。やはりせっかく保存版にするならば、放送のストリームをそのまま保存したいものです。HD DVDがもう少し高容量ならばと悔やまれるところです。(3層以上への多層化による容量増という話もありますが、実用化レベルでいつになるかは不透明)
既に家庭用のビデオカメラにもHD録画のものが登場し始めており、これからは思い出のビデオの保存先としても次世代DVDが求められるようになってくるでしょう。もし万が一CDのように簡単にお亡くなりになってしまうのであれば、大事なデータを保存するものとしては不安でたまりません。Blu-rayの0.1mmカバー+ハードコートが問題ないレベルのものならばよいのですが…。
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